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労務安全について
緑十字旗の精神について
全国の建設作業所で全てといってよいくらい緑十字の安全旗は掲揚されています。
この旗の成り立ちについて述べ、その精神をいまも受け継ぐ意味を考えてみましょう。現在の労働基準法の前身と言える「工場法」が労働者保護の目的で明治44年に成立しました。しかし産業界の反発が大きく、実際に施行されたのは5年後の大正5年でした。明治政府は近代化を推し進めることを国策とし、「富国強兵、殖産興業」のスローガンを掲げて短期間のうちに工業化をなしとげましたが、そんな中で労働者のおかれた環境は二の次とされ、劣悪な環境と労働条件は結核を蔓延させて国民病となっていました。ようやく制定された工場法も先に述べたように、すぐには受け入れられない有様。これが明治時代の労働に対する産業界の姿勢だったのです。
大正初頭、古河鉱業の小田川全之(まさゆき)氏が技術研修で訪れたアメリカのUSスチールでは、ゲーリー会長の「セーフティ・ファースト、クオリティ・セカンド」の理念の下に生産が行なわれ、安全の思想の大切さが全社に浸透していました。小田川氏はこれに深い共感を覚えて、帰国後直ちに「安全専一」と名づけて安全運動を自社に展開を始めたのです。日本の生産現場に安全の思想が入った記念すべき出来事でした。
この後、産業界の中からも「安全」の思想を持った人々が生まれ、大正8年に安全の大会が開催される運びとなり、そのシンボルとして「旗」をどうするかが発起人のなかで議論され、アンリ・デュナンの貢献を讃えた赤十字旗をヒントに、慈しみと命を尊ぶ意味の十字を緑とすることが安全の旗にふさわしいと衆議一決、第1回の安全週間に「安全旗」として会場に掲げられました。それから8年後、国としての安全運動のシンボルとしても認められて現在に至っています。
産業界に安全週間が立ち上げられて91年。
国として安全週間が開催されて83年。
「働くという尊い行為のなかで、決して命を失わさせてはならない」
緑十字旗は、その精神を受け継いだ多くの安全を願う人々の変わらない意志のあらわれとして、今日も作業所に掲げられています。ちなみに赤十字旗はデュナンの祖国スイス国旗の色を反転したものです。イスラム教国などでは十字はキリストにつながるとして、新月を赤くあしらった旗を使っています。
緑十字旗に守られるのではなく、緑十字の精神を受け継ぎながら作業を安全に進めてください。
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